つぶやき★。、::。.::・'゜☆。.::・'゜★。、::。.::・'゜

−随縁−


  早朝「Yさんところのおばあさんが今朝早く亡くなりました。」との電話があった。すぐに1km少しの道のりを車で走らせる。玄関横の仏間の縁側より直接入って行く。すると、待ちかねたように杖を頼りにYさんが立ち上がり近づいてきた。挨拶を交わす間もなく、私の肩に手を置いて「若、こういうことってあるってこっちゃったな」と、うるんだ目で私を見据え、全身で問い掛ける一言を発せられた。私は「うん、そうやなあ、そうやなあ」と頷くしかなかった。

 Yさんは86才。実は一週間前に46才の一人息子をガンで亡くしておられたのだ。その初七日の明けた今朝、息子の死という悲嘆の中に看病の疲れが老弱の身に追い討ちをかけたのであろう、突然の死であった。息子との悲しみの別れに涙の乾く間もなく、60年連れ添った妻とのあっけない別離であった。相次いで愛するものを失ったYさんにしてみれば、どうして?なぜに?の思いが起こらないはずがない。しかし仏法聴聞に生涯をかけてこられたYさんは、どう思い、どう考えようと、この事実は悲しいけれど変わらない事実としてある、と受け止めることのできる確かな智慧の眼差しがあった。「随縁」という言葉の真実に、つらく厳しい確かめをしておられたのであろう。

 この出会いからもう20年近くたった。名もなき念仏者のつぶやきに導かれて、釈尊が、親鸞聖人が語られた教えのことばが、真理のことばとなって私に響いてく機会を、どれ程得ることができたであろうか。私において真実のことばは、様々な実生活の中にあって、まさにいのちの事実をそのまんま生きている人の、正しくうなずかれたことばによってその真実性が証明されてくるのです。

                         (2003年4月 住職ゴリラ)

 

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